日本南アジア学会

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学会関連新着情報

学会関連新着情報 2017/01/27

1/28開催 日本南アジア学会第71回月例懇話会

今回はインド古典文献学の分野の二人の方から、それぞれプラーナ文献ヒンドゥー両性具有神の神話に探る古典的な女性観について、および、サンスクリット文学の細密画から検証するヒンドゥー教美学について、それぞれご発表いただきます。

【日時】 2017年1月28日(土)14時~18時

【会場】 東京大学東洋文化研究所(本郷キャンパス)第三会議室

【第1報告者】 澤田容子 (東洋大学東洋学研究所奨励研究員)

【論題】 黒か白か―アルダナーリーシュヴァラ神話に見るシヴァ神の妻として望まれる肌の色―
【要旨】 アルダナーリーシュヴァラは、シヴァ神の持つ様々な性格の中から創造者という性格を引き受けて確立したと考えられるシヴァ神の化身の一種である。アルダナーリーシュヴァラは「半身が女性であるシヴァ神」という名が示す通り、右半身がシヴァ神であり左半身が女性であるという男女両性具有の姿を基本としている。

 アルダナーリーシュヴァラが登場する神話は、紀元前後から書かれ始め、8~10世紀以降のプラーナ聖典群において一気に多様化する。プラーナ聖典は、古代から現代にかけ作られ民衆の間で伝達されていく中で様々に変化していったとされる膨大な文献群であり、内容は神話や哲学、地理、歴史、風俗など多岐にわたり、様々な時代や地域の情報を含んでいると考えられている。さらに、それぞれのプラーナ聖典は相互に影響し合い、同一の主題に対し異なるヴァリエーションを述べたり独自の内容を付加したりなど複雑に発展している。それゆえ、アルダナーリーシュヴァラも創造者以外の役割を付与され、色々な神話に登場するようになる。その中で、数例ではあるが、女性半身の肌の色に言及している神話が見られた。

 肌の色に関する価値観は、現代社会においても深刻な問題であり、様々な側面から探求し考察する必要があると思われる。そのため、本発表では、女性の肌の色がどのような文脈において何を意図して描写されているのか、古い時代の価値観を反映していると考えられるプラーナ聖典の中のアルダナーリーシュヴァラが登場する神話から読み解こうと考えている。

 

【第2報告者】 三澤(堤)博枝 (東洋大学大学院インド哲学仏教学専攻博士課程)

【論題】 インド細密画に描かれる意匠と情趣―ウダイプル博物館所蔵『ギータ・ゴーヴィンダ』の細密画を中心に―

【要旨】 中世インドのヒンドゥー教美術は、神々の姿や神話の一場面を単に具象的に絵画やレリーフで表現するだけではなく、古代インド以来の演劇や文芸の理論書に説かれるラサ(情趣)理論やバクティ(信愛)といった宗教的な思想を背景に持つと考えられる。その中でも色彩豊かに表現された細密画は、宗教的叙情表現を色濃く反映したものといえよう。

 細密画の流派の一つメーワール派は、ラージプート画を描く流派の中でも初期に誕生した重要な流派とされる。彼らの作品の中で、ラージャスターン州立ウダイプル博物館所蔵の『ギータ・ゴーヴィンダ』の細密画は、詩の内容を精緻かつ忠実に表現しているたいへん珍しい作品である。

 本発表では、その『ギータ・ゴーヴィンダ』の細密画を精査し、サンスクリット原典の精読、および細密画上部の説明書きの解読を通じて、古代インドの宗教的な意匠と情趣がどのように反映されているのかの解明を試みる。

本会は事前の予約は必要なく、どなたでも参加いただけます。

学年末試験や入試等でお忙しい時期ではありますが、みなさまのご参加をお待ち申し上げます。

よろしくお願いいたします。

【問い合わせ先】

澤田 akisawadajp [at] gmail.com  ([at]を”@”に代えて下さい)