日本南アジア学会

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常務理事会より

理事長挨拶

脇村孝平新理事長より就任のご挨拶

大阪市立大学大学院経済学研究科教授(任期:2018年10月~)

日本南アジア学会は、昨年(2017年)で創立30周年を迎えました。会員数が約570名を数えるまでに至り、日本における「南アジア地域研究」を支えるインフラとして今日まで多大の役割を果たしてきたと思います。しかしながら、私たちは、学会の存在があまりにも自明のものとなっているがゆえに、この学会の存在理由について思いをいたすことはあまりなくなっているのではないでしょうか。創立30周年の記念行事(「日本南アジア学会30周年記念連続シンポジウム」)が終わった現在、「地域研究としての南アジア研究」の意義、そして本学会の使命などを改めて考える必要はないのでしょうか。

そもそも「日本南アジア学会」の存在理由は何でしょうか。様々な専攻の人間がたまたま南アジアという地域に関わっているという縁(地縁)で、いわば「同好の士」として集まっているだけなのでしょうか。学会員の皆様は、自身が立脚する学問分野と南アジア地域研究の関係をどのように考えておられるのでしょうか。「地域研究」そのものが一つの「学問分野(discipline)」と言えるのか、さらに「南アジア地域研究」そのものが「学問分野」と言えるのか、議論の分かれるところです。本学会の存在理由として、通常の様々な学問分野あるいは専攻から試みられる南アジアに関する知見の交換の場ということに過ぎないという意見もあるでしょう。あるいは、知見の交換を超えて、それを総合し一つの地域像として結晶化するような場として機能すべきという考え方もあるかもしれません。何れにしても、創立30周年という節目を迎えた今日、本学会としても原点とも言うべきこのような問いかけに対して考える必要を感じています。

二年前に水島前理事長がその挨拶文の中で指摘されていたように、本学会の事務局体制の問題(一定の方々への過重な事務負担)や財政の問題(年々の赤字)などに関してその持続可能性が深刻に問われる中、過去二年間に学会事務の簡略化と効率化が図られ一定の成果をあげてきたと思います。言うまでもなく、このような改革は、今後もさらに続けられる必要があります。なぜならば、少子高齢化と人口減少という日本社会が現在かかえる長期的な課題を考えるとき、本学会もその影響を免れず、存続のためにはかかる基盤の再整備が必要不可欠だからです。しかし、それと同時に、本学会そのものの理念や使命といった本質的なテーマも改めて考える必要に迫られているように思われます。「南アジア地域研究」を志す若い研究者が今後どの程度見込めるのか、そして果たして彼らが本学会の存在に意義を見出してくれるのかが問われざるを得ないからです。

内外の情勢を考えるとき、日本における南アジアへの一般的な関心は確実に高まっているとは思いますが、本学会がこうした状況の変化に対して如何に応えることができるでしょうか。「南アジア地域研究」に関しては、人間文化研究機構による2010年度から2015年度までの「現代インド地域研究」プロジェクトや、その継続として2016年度から始まった「南アジア地域研究推進事業」プロジェクトが活発な研究活動を展開して、多大の成果をあげてきたことは周知の通りです。このような研究助成を得て行われている研究活動に対して、財源を会費に頼り、事務局体制がほぼボランティアによって行われている本学会ではその果たすべき役割は自ずと異なるはずです。こうしたことも、今後考えるべきことかと思います。何れにしても、会員の皆様のご意見やご提言を受けとめながら、本学会の未来の方向性を考える二年間にしたいと思います。ご協力のほど宜しくお願いします。

2018年10月
日本南アジア学会理事長 脇村孝平

 

水島司理事長より就任のご挨拶

東京大学大学院人文社会系研究科教授(任期: 2016年10月-2018年9月)

2017年に創立30周年を迎える日本南アジア学会ですが、解決すべき幾つかの問題を抱えています。第一の最も深刻な問題は、事務局の引き受け手がいないことです。このような事態は前代未聞のことであり、学会の運営上も大変深刻です。現在は、学会運営のための業務を極力分散あるいは外注し、それでもカヴァーできない部分に関しては常務理事会担当の名和克郎常務理事に処理して頂いていますが、この状態が続きますと、本学会の存続自体が危機に瀕すると考えています。会員の中から、事務局担当を申し出て下さる方が一刻も早く出現して下さることを祈るのみです。第二の問題は、財政の問題です。ごく簡単にまとめますと、年間の会費収入が330万円前後であるのに対して、年間予算は通常380万円ぐらいとなります。したがって、恒常的な赤字は年間50万円です。現在、基金準備金特別会計が450万円強ありますので、それを取り崩して凌いでいますが、現在の学会費をそのまま維持した場合、長くてもあと10年ぐらいで業務が停止する見込みです。解決には、経費のかかる業務の縮小か学会費の値上げ、基金への寄付などの手段をとらざるを得ません。

このような現状から、常務理事会では、幾つかの対策を考え、実行に移す準備をしていますが、そのいくつかは、これまでの業務のあり方をかなり変えるものとなるはずです。現在考えておりますのは、1.会費値上げは最後の手段とする、2.経費削減、速報性の改善、サーキュレーションの改善のために英文雑誌はE-Journalとする、3.和文雑誌をより経費のかからないものとする、4.新規入会者の受け付け事務、会計事務その他を極力簡素化あるいは外部委託し、事務局の負担を軽減することによって、事務局の引き受け手が出てきやすい状況にする、などです。既に、学会のE-メール網は、従来の事務局による点検を受けてからの配信という方式から、学会員の良識に任せるグループメールに移行し、また各種業務に関しても、それぞれの業務担当常務理事が学会ホームページなどを通じての自律的な運営とする、新規入会者の受け付け事務の外部委託などは実施に移しています。これら以外にも、色々と業務の簡素化のための工夫を考えています。うまくいくかどうかの評価にはしばらく時間がかかると思いますが、学会活動を維持していくためには不可避と考えています。

冒頭に記しましたように、2017年は学会創立30周年を迎えます。20周年に際しては、連続シンポジウムを各地で開催し、特集号も発行したように記憶しています。30周年に関しては、まだ声は上がっていません。学会員からの提言を期待しています。

学会も設立から30年を経過しますと、存在が当たり前になったがゆえに、学会設立時の熱が消え、学会へのコミットメントも大きく低下してくるように思います。また、学会以外でさまざまな活動が行われていることから、学会のプレゼンスと必要性が低下するという面もあるでしょう。それを、活動の活性化で乗り切るのか、活動を停止することで今一度存在の意義を確認しようとしてみるのか、判断が難しいところです。いずれにしましても、節目あるいは岐路に立っていることは間違いありません。ホームページなどにより、学会員と常務理事会とのコミュニケーションを密にし、どちらの方向に進むべきか判断しなければなりません。会員諸氏からの発言を期待しています。

2016年10月
日本南アジア学会理事長 水島司

 

押川文子理事長より就任のご挨拶

京都大学地域研究統合情報センター教授(任期: 2012年10月-2016年9月)

本年10月、日本南アジア学会(JASAS)は、東京外国語大学において第25回全国大会を開催しました。

1988年の設立以来四半世紀を経てJASASは、設立趣意書に謳われた「今日生み出されつつある多種多様な研究成果を、異なった専門分野や異なった地域に関心を持つ全国の南アジア研究者の間で共有し、円滑な学問的交流を保証するような全国的な場をつくり出すこと」という精神はそのままに、前理事長柳澤悠会員をはじめ歴代の理事会や事務局、そして会員各位のご尽力のもとに着実に活動を拡大してきました。とくに研究成果の発信に意欲的に取り組み、和文誌『南アジア研究』に加えて、1997年からは英文叢書シリーズJapanese Studies on South Asia Seriesを、また2008年からは英文誌International Journal of South Asian Studies をMonohar社(デリー)から刊行するなど、日本の南アジア研究の活性化と国際化に目覚ましい足跡を残しています。

同時にこの四半世紀は、南アジア研究の環境を大きく変化させた年月でもありました。研究対象地域である南アジアのダイナミックな変容は、新しい研究課題や研究方法を要請しています。また内外の研究状況も変化し、日本でも重点領域研究に続いて2010年度からは人間文化研究機構「現代インド地域研究」プロジェクトが活発に活動しています。前期からすでに着手されていた海外の南アジア研究学会との連携強化や英語出版物への刊行助成制度創設など、JASASとしても新しい環境に対応した取り組みを継続することが、10月の総会において確認されました。それとともに、広い分野の世代を超えた研究交流の場としての役割を再確認し、全国大会、月例研究会、ホームページやメイリングリストを通じた情報提供などのさらなる充実にも、会員各位のイニシアティブをもとに取り組みたいと考えています。

JASASは会員数500余名、財源のほぼすべてを会費に頼る中規模学会です。上記の素晴らしい足跡は、各活動を担当された会員各位と歴代事務局のまさに「献身的」としか形容のしようのないご尽力によって実現されたものでした。運営基盤の強化や職務分担による参加型運営のさらなる推進は、今期の理事会・常務理事会にとっても大きな課題だと痛感しています。

幸い、今期も全国の会員から強力な理事・常務理事が選出されました。またJASASの活動を支える事務局は、過去3年間精力的に体制整備を推進された宮本久義会員を事務局長とする東洋大学から、太田信宏会員を事務局長とする東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所へ確実に引き継がれています。まことに非力な理事長ではありますが、理事会・常務理事会、そして事務局のご協力をえて、JASASの良き伝統を堅持しつつ活動の充実に努める所存です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

会員の皆様、新しい試みや運営の改善点など、積極的なご提言やご意見をぜひお寄せください。
JASASが、南アジア研究の「わくわくする面白さ」を共有する場として発展することを念じつつ。

2012年10月
日本南アジア学会理事長 押川文子