理事長挨拶
マハラジャン・ケシャブ・ラル新理事長より就任のご挨拶
広島大学大学院人間社会科学研究科教授(任期:2022年10月~)
理事長挨拶
この度、日本南アジア学会理事長に選出されましたマハラジャン・ケシャブ・ラルでございます。1979年に日本国政府文部省(当時)の奨学金を得て、ネパールから来たネワール人です。来日後東京外国語大学付属日本語学校で約1年間日本語、日本事情、高校レベルの理数社科目の基礎を日本語で勉強した後、1980年に京都大学農学部に入学しました。同大学の学士、修士、博士課程を経て、1990年に農学博士号取得しました。同じ年に広島大学の助手になり、以降同大学を拠点として教育研究活動に従事し、現在広島大学大学院人間社会科学研究科教授として仕事をしています。主たる研究分野は、南アジア地域研究、農林経済学、農村開発論です。
南アジアを対象とした地域研究を主眼におく本学会は、何千年にも渡る歴史、広大な地域を視野に入れつつ、南アジア地域を、日本を含めた国際的な文脈において理解することを命題とし、関連研究を推進・交流する学術の場を提供しています。昨今の国際情勢、IT技術の進歩、グローバル化、学会員の高齢化に伴う会員数の減少等を鑑み、本学会の国際化の必要性は会員の共通認識であると理解されます。
コロナ禍において、人の移動制限をはじめとするさまざまな規制が導入されたため、学会活動のみならず現地調査、会員同士の交流等、会員の行動も大きく制限され不自由な経験をしました。他方、これらの制限ゆえに、IT技術の利用・工夫が進み、学会運営・活動が別の意味でよりスムーズになった面もあります。この点は今後の学会の国際化においても重要になることは間違いありません。「ウィズ・コロナ」のグローバル社会においてIT技術を活用したハイブリッド型の活動は本学会の国際化においても重要となるでしょう。
本学会の国際化のためになすべきことは多々あります。海外の研究者、研究グループ、学術団体等との交流の推進、日本語を得意としない国内の研究者のネットワーク化、彼らの学会活動・運営への積極的参加の促進、学会活動及び学会に関する情報のバイリンガル化等が特に重要だと理解されます。これらのことはあまり無理のない形で実現されることが期待されます。会員の皆様のご意見、ご協力をお願い申し上げます。
Greetings from the President
I am Keshav Lall Maharjan, who has been elected the President of The Japanese Association for South Asian Studies (JASAS). I came to Japan in 1979, after I received a scholarship from the Ministry of Education of the Japanese Government. I am a Newar from Nepal. Soon after arriving in Japan, I entered the Japanese Language School attached to Tokyo University of Foreign Studies where I studied Japanese language, current issues of Japan and the high school level basics of sciences and mathematics in Japanese for about a year. Thereafter, I entered the Faculty of Agriculture at Kyoto University in 1980. After completing the Bachelor’s, Master’s, and Doctoral courses there, I was awarded a Doctorate in Agriculture in 1990. In the same year, I became a Research Associate at Hiroshima University, and since then I have been engaged in education and research activities. I am currently working as a Professor at the Graduate School of Humanities and Social Sciences, Hiroshima University. My main research fields are South Asian Area Studies, Agricultural and Forestry Economics, and Rural Development Studies.
JASAS, which focuses on area studies centered on South Asia, has always set itself the proposition, across time and space, to understand South Asia in an international context, including Japan, and has provided academic opportunities for promoting and exchanging related research activities. Considering the recent international situation, advances in IT technology, globalization, and a decrease in the number of members, it is understood that the necessity of internationalization of JASAS is a common recognition among the members.
As we all know, there were various restrictions, such as the movement of people during the coronavirus period, and not only the activities of JASAS but also the activities of members, such as field surveys and exchanges between members were considerably restricted. On the other hand, IT technology has been devised to address these restrictions, and it has become possible to manage and carry out academic activities, rather smoothly even during the coronavirus period. There is no doubt that this will be important for the internationalization of the Association in the future. In the global society of “with corona”, hybrid activities using IT technologies, among others will be important in the internationalization of JASAS.
There are many things to do in the internationalization of JASAS. It is understood that it is particularly important, to promote exchanges with overseas researchers, research groups, academic organizations, etc., to network domestic researchers who are not good at Japanese, to promote their active participation in the activities and management of JASAS, and to make JASAS activities bilingual and disseminate its information in English as well. It is expected that these aspects will be realized spontaneously without much difficulty. I would like to request for the JASAS members’ opinions and cooperation in this regard.
सभापतिका अभिवादन
म जापानिज एसोसिएसन फर साउथ एसियन स्टडिज (JASAS (जसास)) को सभापतिमा निर्वाचित केशव लाल महर्जन हुँ। सन् १९७९ मा जापान सरकारको शिक्षा मन्त्रालयबाट छात्रवृत्ति प्राप्त गरेर नेपालबाट आएका नेवार हुँ। जापान आइसकेपछि टोकियो युनिभर्सिटी अफ फरेन स्टडिज अन्तर्गत जापानी भाषा स्कूलमा करिब एक वर्ष जापानी भाषा, जापानका समसामयिक परिस्थिति र हाई स्कूल स्तरका विज्ञान र गणितकाआधारभूत कुराहरू जापानी भाषामा अध्ययन गरें। त्यसपछि सन् १९८० मा क्योटो विश्वविद्यालयको कृषि विज्ञान विभागमा प्रवेश गरें। सोही विश्वविद्यालयबाट स्नातक, स्नातकोत्तर र विद्यावारिधि स्तरमा अध्ययन गरेपछि सन् १९९० मा कृषिमा विद्यावारिधि गरें। त्यही वर्ष, म हिरोशिमा विश्वविद्यालयमा रिसर्च एसोसिएट भएँ, र त्यसपछि म शिक्षा र अनुसन्धानमा संलग्न छु। हाल म हिरोशिमा विश्वविद्यालयको ग्रेजुएट स्कुल अफ ह्युम्यानिटीज एण्ड सोसियल साइन्समा प्राध्यापकको रुपमा कार्यरत छु। मेरो मुख्य अनुसन्धान विषयहरू दक्षिण एसियाली क्षेत्र अध्ययन, कृषि र वन अर्थशास्त्र, र ग्रामीण विकास अध्ययन हुन्।
दक्षिण एशियालाई केन्द्रित गरेर क्षेत्रगत अध्ययन अनुसन्धानमा सम्लग्न JASAS (जसास)ले जापानलगायत अन्तर्राष्ट्रिय परिवेशमा दक्षिण एसियाका विभिन्न समयकाल र स्थानलाई बुझ्ने प्रस्तावना सँगै सम्बन्धित अनुसन्धानको प्रवर्द्धन र आदान-प्रदानका लागि प्राज्ञिक अवसर प्रदान गरेको छ। हालको अन्तर्राष्ट्रिय परिस्थिति, आईटी टेक्नोलोजीमा भएको प्रगति, भूमण्डलीकरण र सदस्यहरूको संख्यामा आएको कमीको सन्दर्भमा, जसासको अन्तर्राष्ट्रियकरणको आवश्यकतालाई सदस्यहरू बीच एक सामान्य मान्यताको रूपमा बुझिन्छ।
हामिसबैलाई अवगत छ, कोरोनाभाइरसको समयमा मानिसहरूको आवागमन आदिमा विभिन्न प्रतिबन्धहरू थिए। त्यहि सन्दर्भमा जसासका गतिविधिहरू मात्र नभएर सदस्यहरूका गतिविधिहरू, जस्तै अध्यन क्षेत्रका सर्वेक्षण र सदस्यहरू बीचका आदान-प्रदानहरू पनि एक किसिमले प्रतिबन्धित थिए। अर्कोतर्फ, यी प्रतिबन्धहरूलाई सम्बोधन गर्न आईटी टेक्नोलोजीको विकास र प्रयोजन गरिएको छ, जसले गर्दा प्राज्ञिक गतिविधिहरू शहजरुपले व्यवस्थापन र सञ्चालन गर्न सम्भव भएको छ। भविष्यमा जसासको अन्तर्राष्ट्रियकरणका लागि यो कुरा महत्वपूर्ण हुनेमा कुनै शङ्का छैन। “कोरोनासँग”को विश्वव्यापी समाजमा, प्राज्ञिक समाजको अन्तर्राष्ट्रियकरणमा आईटी टेक्नोलोजी प्रयोजन गरिएका हाइब्रिड गतिविधिहरू धेरै महत्त्वपूर्ण हुनेछन्।
जसासको अन्तर्राष्ट्रियकरणमा गर्नुपर्ने कामहरु धेरै छन्। यस सन्दर्भमा अन्तर्राष्ट्रिय अनुसन्धानकर्ताहरू, अनुसन्धान समूहहरू, शैक्षिक संगठनहरू आदिसँग प्राज्ञिक आदान-प्रदानलाई बढावा दिनु, जापानी भाषामा निपुण नभएका अनुसन्धानकर्ताहरूलाई नेटवर्क गर्नु, जसासका व्यवस्थापन र गतिविधिहरूमा उनीहरूको सक्रिय सहभागिता लाई बढावा दिनु, र जसास गतिविधिहरू द्विभाषी बनाउनु र यसको जानकारी अंग्रेजीमा पनि प्रसार गर्नु आदि विशेष गरी महत्त्वपूर्ण छन्। यी पक्षहरू धेरै कठिनाई बिना अनायास तरिकाले ब्यवहारमा ल्याइने कुराको आशा गरिन्छ। यस सम्बन्धमा जसासका सदस्यहरुको राय र सहयोगका लागि अनुरोध गर्न चाहन्छु ।
(ネパール語、in Nepali)
井上貴子理事長より就任のご挨拶
大東文化大学国際関係学部教授(任期:2020年10月-2022年9月)
2020年は、新型コロナの感染拡大という、私たちの誰もが過去に体験したことのない未曽有の事態と共に幕開けし、世界中の人々がこの新しい事態への対応を迫られることになりました。日本南アジア学会の会員の多くは、大学をはじめ高等教育機関で教育研究を行う研究者と学生で構成されています。これまでほとんどの研究者や学生が知らなかったような、パソコンやスマートフォンを通じてミーティングやセミナーを行うアプリケーション・ソフトを用いて、オンラインやオンデマンド方式の授業をゼロから構築することになろうとは、誰が想像したでしょうか。慣れない授業や会議への対応の過程で、私たちは新しい方法を学ばざるを得なくなったわけです。
2020年10月3~4日、日本南アジア学会第33回全国大会はオンライン開催され、多くの出席者を得て滞りなく終了しました。また、学会運営に携わる理事会をはじめとする各種委員会もオンライン開催となりましたが、それによって学会本来の機能が損なわれることはなく、むしろスムースな運営を可能にした点も見逃せません。オンライン会議の長所は、なんといっても移動時間が節約できることです。自宅からでも参加できるため、会議の出席率は著しく高まりました。
一方、小さなパソコンの画面を通じて、ときには顔の見えない名前だけの出席者に向かって話さなければならないことが多く、人と人とのふれあい、一つの場を共有する空気感や臨場感などを味わうことはできません。その意味で、本当に危機感を感じたのは、地域研究に従事する多くの研究者が最も重視している方法であるフィールドワークが、当面の間、実施できなくなったことです。現在進行中の研究プロジェクトを抱える皆さんは、期間の延期を真剣に検討されていることでしょう。パンデミックは、ホワイトハウスからインドのスラム街まですべての人々に公平に訪れたように見えますが、実態は全く異なり、社会的弱者にとってより厳しいものであることは明らかとなっています。そのような現実を見ると、声なき声に耳を傾ける地域研究の重要性を再認識せずにはいられません。
学会運営の側面については、少子高齢化と人口減少という現代日本の問題が解決したわけではなく、脇村前理事長から引き継いだ学会事務の簡略化と効率化を継続して進めていかなければなりません。前理事長の尽力によって、開催担当校の負担軽減を目的として、2021年度の全国大会から、開催担当校の実行委員会は会場確保と運営に専念し、大会プログラムの内容については、理事を中心に新たに設置されるプログラム・審査委員会が担当することになりました。広く薄く会員が少しずつ業務を分担するという方向性は、今後も進めていく必要があるでしょう。また、学会の現状をふまえた上で、各種委員会の統廃合や規定の改正に取り組み、事務局負担の一層の軽減を図っていく必要があります。
さて、まもなく人間文化研究機構による地域研究プロジェクトが終了となります。このプロジェクトは、特に国際学術交流と若手研究者に道を開いてきたという意味で大きな役割を果たしたと思います。しかし今後は、南アジア地域研究活性化のために、本学会への期待値が高まることでしょう。微力ながら、若い学生さんが「面白い」「やってみたい」と思えるような研究、「楽しい」「参加したい」と思えるような学会にしていきたいと思います。会員の皆様のご意見ご提言をお待ち申し上げております。
2020年10月
日本南アジア学会理事長 井上貴子
脇村孝平理事長より就任のご挨拶
大阪経済法科大学経済学部教授(任期:2018年10月-2020年9月)
日本南アジア学会は、昨年(2017年)で創立30周年を迎えました。会員数が約570名を数えるまでに至り、日本における「南アジア地域研究」を支えるインフラとして今日まで多大の役割を果たしてきたと思います。しかしながら、私たちは、学会の存在があまりにも自明のものとなっているがゆえに、この学会の存在理由について思いをいたすことはあまりなくなっているのではないでしょうか。創立30周年の記念行事(「日本南アジア学会30周年記念連続シンポジウム」)が終わった現在、「地域研究としての南アジア研究」の意義、そして本学会の使命などを改めて考える必要はないのでしょうか。
そもそも「日本南アジア学会」の存在理由は何でしょうか。様々な専攻の人間がたまたま南アジアという地域に関わっているという縁(地縁)で、いわば「同好の士」として集まっているだけなのでしょうか。学会員の皆様は、自身が立脚する学問分野と南アジア地域研究の関係をどのように考えておられるのでしょうか。「地域研究」そのものが一つの「学問分野(discipline)」と言えるのか、さらに「南アジア地域研究」そのものが「学問分野」と言えるのか、議論の分かれるところです。本学会の存在理由として、通常の様々な学問分野あるいは専攻から試みられる南アジアに関する知見の交換の場ということに過ぎないという意見もあるでしょう。あるいは、知見の交換を超えて、それを総合し一つの地域像として結晶化するような場として機能すべきという考え方もあるかもしれません。何れにしても、創立30周年という節目を迎えた今日、本学会としても原点とも言うべきこのような問いかけに対して考える必要を感じています。
二年前に水島前理事長がその挨拶文の中で指摘されていたように、本学会の事務局体制の問題(一定の方々への過重な事務負担)や財政の問題(年々の赤字)などに関してその持続可能性が深刻に問われる中、過去二年間に学会事務の簡略化と効率化が図られ一定の成果をあげてきたと思います。言うまでもなく、このような改革は、今後もさらに続けられる必要があります。なぜならば、少子高齢化と人口減少という日本社会が現在かかえる長期的な課題を考えるとき、本学会もその影響を免れず、存続のためにはかかる基盤の再整備が必要不可欠だからです。しかし、それと同時に、本学会そのものの理念や使命といった本質的なテーマも改めて考える必要に迫られているように思われます。「南アジア地域研究」を志す若い研究者が今後どの程度見込めるのか、そして果たして彼らが本学会の存在に意義を見出してくれるのかが問われざるを得ないからです。
内外の情勢を考えるとき、日本における南アジアへの一般的な関心は確実に高まっているとは思いますが、本学会がこうした状況の変化に対して如何に応えることができるでしょうか。「南アジア地域研究」に関しては、人間文化研究機構による2010年度から2015年度までの「現代インド地域研究」プロジェクトや、その継続として2016年度から始まった「南アジア地域研究推進事業」プロジェクトが活発な研究活動を展開して、多大の成果をあげてきたことは周知の通りです。このような研究助成を得て行われている研究活動に対して、財源を会費に頼り、事務局体制がほぼボランティアによって行われている本学会ではその果たすべき役割は自ずと異なるはずです。こうしたことも、今後考えるべきことかと思います。何れにしても、会員の皆様のご意見やご提言を受けとめながら、本学会の未来の方向性を考える二年間にしたいと思います。ご協力のほど宜しくお願いします。
2018年10月
日本南アジア学会理事長 脇村孝平
水島司理事長より就任のご挨拶
東京大学大学院人文社会系研究科教授(任期: 2016年10月-2018年9月)
2017年に創立30周年を迎える日本南アジア学会ですが、解決すべき幾つかの問題を抱えています。第一の最も深刻な問題は、事務局の引き受け手がいないことです。このような事態は前代未聞のことであり、学会の運営上も大変深刻です。現在は、学会運営のための業務を極力分散あるいは外注し、それでもカヴァーできない部分に関しては常務理事会担当の名和克郎常務理事に処理して頂いていますが、この状態が続きますと、本学会の存続自体が危機に瀕すると考えています。会員の中から、事務局担当を申し出て下さる方が一刻も早く出現して下さることを祈るのみです。第二の問題は、財政の問題です。ごく簡単にまとめますと、年間の会費収入が330万円前後であるのに対して、年間予算は通常380万円ぐらいとなります。したがって、恒常的な赤字は年間50万円です。現在、基金準備金特別会計が450万円強ありますので、それを取り崩して凌いでいますが、現在の学会費をそのまま維持した場合、長くてもあと10年ぐらいで業務が停止する見込みです。解決には、経費のかかる業務の縮小か学会費の値上げ、基金への寄付などの手段をとらざるを得ません。
このような現状から、常務理事会では、幾つかの対策を考え、実行に移す準備をしていますが、そのいくつかは、これまでの業務のあり方をかなり変えるものとなるはずです。現在考えておりますのは、1.会費値上げは最後の手段とする、2.経費削減、速報性の改善、サーキュレーションの改善のために英文雑誌はE-Journalとする、3.和文雑誌をより経費のかからないものとする、4.新規入会者の受け付け事務、会計事務その他を極力簡素化あるいは外部委託し、事務局の負担を軽減することによって、事務局の引き受け手が出てきやすい状況にする、などです。既に、学会のE-メール網は、従来の事務局による点検を受けてからの配信という方式から、学会員の良識に任せるグループメールに移行し、また各種業務に関しても、それぞれの業務担当常務理事が学会ホームページなどを通じての自律的な運営とする、新規入会者の受け付け事務の外部委託などは実施に移しています。これら以外にも、色々と業務の簡素化のための工夫を考えています。うまくいくかどうかの評価にはしばらく時間がかかると思いますが、学会活動を維持していくためには不可避と考えています。
冒頭に記しましたように、2017年は学会創立30周年を迎えます。20周年に際しては、連続シンポジウムを各地で開催し、特集号も発行したように記憶しています。30周年に関しては、まだ声は上がっていません。学会員からの提言を期待しています。
学会も設立から30年を経過しますと、存在が当たり前になったがゆえに、学会設立時の熱が消え、学会へのコミットメントも大きく低下してくるように思います。また、学会以外でさまざまな活動が行われていることから、学会のプレゼンスと必要性が低下するという面もあるでしょう。それを、活動の活性化で乗り切るのか、活動を停止することで今一度存在の意義を確認しようとしてみるのか、判断が難しいところです。いずれにしましても、節目あるいは岐路に立っていることは間違いありません。ホームページなどにより、学会員と常務理事会とのコミュニケーションを密にし、どちらの方向に進むべきか判断しなければなりません。会員諸氏からの発言を期待しています。
2016年10月
日本南アジア学会理事長 水島司
押川文子理事長より就任のご挨拶
京都大学地域研究統合情報センター教授(任期: 2012年10月-2016年9月)
本年10月、日本南アジア学会(JASAS)は、東京外国語大学において第25回全国大会を開催しました。
1988年の設立以来四半世紀を経てJASASは、設立趣意書に謳われた「今日生み出されつつある多種多様な研究成果を、異なった専門分野や異なった地域に関心を持つ全国の南アジア研究者の間で共有し、円滑な学問的交流を保証するような全国的な場をつくり出すこと」という精神はそのままに、前理事長柳澤悠会員をはじめ歴代の理事会や事務局、そして会員各位のご尽力のもとに着実に活動を拡大してきました。とくに研究成果の発信に意欲的に取り組み、和文誌『南アジア研究』に加えて、1997年からは英文叢書シリーズJapanese Studies on South Asia Seriesを、また2008年からは英文誌International Journal of South Asian Studies をMonohar社(デリー)から刊行するなど、日本の南アジア研究の活性化と国際化に目覚ましい足跡を残しています。
同時にこの四半世紀は、南アジア研究の環境を大きく変化させた年月でもありました。研究対象地域である南アジアのダイナミックな変容は、新しい研究課題や研究方法を要請しています。また内外の研究状況も変化し、日本でも重点領域研究に続いて2010年度からは人間文化研究機構「現代インド地域研究」プロジェクトが活発に活動しています。前期からすでに着手されていた海外の南アジア研究学会との連携強化や英語出版物への刊行助成制度創設など、JASASとしても新しい環境に対応した取り組みを継続することが、10月の総会において確認されました。それとともに、広い分野の世代を超えた研究交流の場としての役割を再確認し、全国大会、月例研究会、ホームページやメイリングリストを通じた情報提供などのさらなる充実にも、会員各位のイニシアティブをもとに取り組みたいと考えています。
JASASは会員数500余名、財源のほぼすべてを会費に頼る中規模学会です。上記の素晴らしい足跡は、各活動を担当された会員各位と歴代事務局のまさに「献身的」としか形容のしようのないご尽力によって実現されたものでした。運営基盤の強化や職務分担による参加型運営のさらなる推進は、今期の理事会・常務理事会にとっても大きな課題だと痛感しています。
幸い、今期も全国の会員から強力な理事・常務理事が選出されました。またJASASの活動を支える事務局は、過去3年間精力的に体制整備を推進された宮本久義会員を事務局長とする東洋大学から、太田信宏会員を事務局長とする東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所へ確実に引き継がれています。まことに非力な理事長ではありますが、理事会・常務理事会、そして事務局のご協力をえて、JASASの良き伝統を堅持しつつ活動の充実に努める所存です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
会員の皆様、新しい試みや運営の改善点など、積極的なご提言やご意見をぜひお寄せください。
JASASが、南アジア研究の「わくわくする面白さ」を共有する場として発展することを念じつつ。
2012年10月
日本南アジア学会理事長 押川文子